恋愛日和    after story omnibus
櫂✖️ヒカリ

『ん‥‥なんか今日しつこ‥‥ッ』


「そのしつこいことに喘いでるのは
 ‥‥誰だよ?」


暗い部屋の壁に映る2人の影は
小さな電気ストーブのオレンジの光に
照らされたまま夜を迎える


甘い部分を執拗に責めながら
白く細い腰に手を滑らせると、
ヒカリの体がビクっとハネた


『櫂ッ‥‥も‥‥無理‥‥』


「‥‥エロ」


少し前まではヒカリの事なんて
なにも知らなかった。


金髪で髪が短くて化粧すらしない
女なのに、全く甘えてさえ来ない
変わった生き方にもどかしい存在でも
あった。


日に当たらない仕事のせいか、
白く透明感のある滑らかな肌


細くてしなやかな手足や背中や腰に
触れる度、色付くのはいつまで経っても
慣れない


『ッ‥‥ハァ‥‥ンッ‥ンン』


3週間ぶりだから抑えが効かない‥


そんなの言い訳かもしれないけど、
鳥のように世界を駆け回る相手と
過ごせるうちは、服一枚だって
邪魔になる





『‥‥‥‥寒ッ‥‥雪降ってるし。』


「ちゃんと服着ろよ‥本当にいつも
 薄着だな。体冷やすなよ?」


シャワー後キャミソールに下着姿で
窓側に立つ彼女に強引に自分の
スウェットを頭から被せる



ピアノを弾く時もドレス一枚だから
慣れてるんだと‥‥‥


『‥‥櫂の香りって甘いね。
 私これ好きよ。』


俺の香り?


香水も柔軟剤も使ってないから、
せいぜい煙草か体臭だろうけど甘いか?


シーツを変えたベッドに潜り込んできた
ヒカリが毛布に包まり服の袖に顔を
埋める



『やっぱり甘い‥‥』


そんな可愛いことを言い放つ彼女の
短い髪をクシャっと撫でると、
腕の中に閉じ込めた


「今度は何処に行くんだよ‥‥」


『暫くは東京よ。2週間後からドイツ、
 デンマーク、中国に一ヶ月。』


付き合いを始めたものの、年間通したら
半分は海外生活なのかもしれない。


こんなに有名だったのにも関わらず、
知らなかったなんてな‥‥‥


都合のいいセフレだと思われてる俺には
探す権利もなかったけど、今思えば、
たった一言自分から聞く勇気があれば
もっと早くこうして過ごせてた



ああ‥‥時間を巻き戻してぇ‥‥‥



「‥俺と‥‥籍入れるか?」
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