片想いに終止符を
7
「えっと、お祭り回ろう?」
「ん。」
短い返事をした後、右手を差し出される。
何かわからなくて首を傾げると、パシッと左手を捕まれた。
「……はぐれたら大変だろ?」
「う、うん。」
思いがけず手を繋いで歩けることになったことが嬉しい。
それよりも、はぐれないようにという桐生くんの優しさが何より嬉しかった。
嬉しいけれど、緊張が消えた訳ではないし、むしろピークではないかと思う。
手を繋いで貰ったことに、緊張して思わず固まってしまう。
桐生くんがフッ笑う。
「この前、華音から手握ってきたのに緊張してんのか?」
花火大会に誘った時の話をしているのだろう。
桐生くんの表情はからかっているようにも見えた。
「あ、あれは、嬉しくてつい……勢いでやっちゃったというか……。そ、それよりも、なんでいきなり名前呼びなの!?」
勢いで、さっきから疑問に思ってたことを口にする。
「柊より、華音の方が呼びやすいだろ。」
わたしからしたら馴染み深いというのもあって、変わらない気がするけれど、桐生くんがそう言うのならいいかと思う。
名前で呼んでもらえるのもすごく嬉しいし。
「俺のことも京真って呼んでいいぞ。」
いきなりの提案にびっくりする。
いきなり桐生くんのことを名前で呼ぶのは、わたしにはまだハードルが高い。
「それは、そのうちってことで。」
ははっ!と笑って桐生くんは優しい笑顔で頷いた。
「わかった。」
「じゃあ、行くか。」
「うん!」
桐生くんの温かい手をぎゅっと握る。
お祭りを回る頃にはすっかり、緊張はどこかへ消えて、心臓は甘くドキドキとしているだけだった。