片想いに終止符を
side 京真
中学三年の時、俺は荒れていた。
毎日、喧嘩ばっかしてた。
その日も喧嘩して、俺はボコボコにされた。
公園でボロボロになってると、一人の女がこっちを見ていた。
怖かったのかすぐ消えたが、数分後、女は戻って来た。
そして、ボロボロの俺に近づいてきた。
「あの、大丈夫ですか?」
気弱そうな女だと最初は思った。
声を掛けたところですぐに去るだろうと。
でも、女は心配そうに俺を見て、血だらけの腕や顔を手当てし始めた。
「これ、良かったらどうぞ。」
そう言って渡されたのは水だった。
「ありがと。」
小さく呟くと女は、花が咲くような笑顔を浮かべた。
こんな俺を心配してくれんのが嬉しかった、こんな俺に優しい笑顔を浮かべてくれて嬉しかった。
こん時、俺はこの女を好きになったんだと思う。
女に助けられた日から、俺は喧嘩をやめた。
サボりがちだった学校にも行くようになった。
少しでも、優しいあの女に近づきたいと思って。
高校に上がって、いつものように電車に乗ったら中学時、手当してくれたあの女を見つけた。
体調が悪そうなのを見た瞬間、気づいたら勝手に身体が動いていた。
人が少ない場所に移動して、水を飲むとやっと落ち着いたような顔をする。
その表情にホッとする。
それから、一緒の学校ってこともあって、体調も良くなったようだから、学校まで送った。
それで終わりだと思ったが、高校二年になって同じクラスになった。
そこで、俺は女の名前を知った。
柊 華音
名前までも凛として優しいと思った。
片想い相手と同じクラスになれたのは嬉しかったが、話しかけたりすることはない。
俺なんかに話しかけられたら、迷惑だろうと思ったんだ。
でも、華音が夏祭りに誘ってきた。
俺のことを覚えてたのが嬉しかった。
華音だから夏祭りに行こうと決めた。
夏祭りの日は、浴衣姿で現れた華音があまりにも可愛くて、名前で呼んだ。
顔を真っ赤にする姿が可愛くて、緊張してんのかちょっと固くなってんのも可愛い。
祭りを見て回って、柄にもなくお面をお揃いでつけて、少しこそばゆい。
でも、華音とならいいと思う。
俺は華音と二人きりになりたくて、花火がよく見える穴場に連れてった。
花火が始まるとキラキラと目を輝かせながら花火を見る華音に釘付けになる。
すると、華音がこっちを見た。
目が合う。
「好き。」
思わず言ってしまったというような呟きだった。
華音の俺のことが心底好きだという表情や声に、顔が熱くなる。
赤くなった顔は隠せなかった。
華音から目を逸らしたくないと思う。
「わたし、桐生くんのことが、好きです……。」
花火の音がうるさく響いてるはずなのに、華音の声しか聞こえない。
「助けてもらったあの日から、優しい桐生くんが、笑顔が素敵な桐生くんが大好きです。」
こんな俺といても幸せにできないかもしれない。
中学ん時、喧嘩ばっかしてた俺だ。
未だに俺のことを思ってないやつもたくさんいる。
「俺でいいのか?」
こんな俺でいいのかと聞く。
華音は、初めて会った時よりも、可愛い笑顔で浮かべる。
「うん。き……京真くんがいいの……!」
その瞬間、華音を好きだという気持ちが溢れた。
「俺も華音のことが好きだ。」
絡んでくるやつがいたら守ればいい。
「俺と付き合ってくれないか?」
「はい!!」
華音が可愛くて、愛おしくて、キスを一つ落とす。
この可愛いやつは俺が絶対に守ろう。
この先なにがあったとしても、こいつのことを幸せにして見せると誓った。