異動する先輩から食事に誘われたら
「良かったら、食事に行かない?」

 先輩にそう言われたのは、先輩が異動を告げられた金曜日の終業後だった。

「行きます」
 私は即答した。

 ずっと先輩に恋していた。
 その彼から誘われて、行かないわけがない。





 先輩は2つ上の27歳。
 私が入社したときにはもうバリバリ働いていて、成績を残していた。

 優しい笑顔が素敵で、はきはきと話す姿が爽やかだった。

 困っているとさりげなく助けを差し伸べてくれて、誰からも好かれていた。

 人気がある人だから、私はただ見ているだけだった。

 私みたいな地味な女は彼とつきあうなんて無理だと思う。

 私が野菜ならスーパーでまとめ売りされてる特売品。

 彼ならデパートできれいに陳列されている高級ブランド野菜だ。

 その彼に誘われるなんて、一生の記念になると思う。

 ああ、こんなことならもっと素敵な服を着てきたらよかった。

 いつも通りの冴えないかっこうだ。

 化粧直しにいく時間もなくて、てかった顔のまま、先輩と食事にいくはめになった。
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