depot~停車駅~(短編)
小学六年生までは、両親と三つ下の妹と毎年訪れていたのだが、父親が脱サラして『お袋さん』と言う弁当屋を始めて忙しくなってからは、俺一人で訪ねるのが恒例となっていた。
中学一年生の時、初めて一人で辿り着いた時は、『ああ、俺って大人!』と妙に嬉しかったものだ。
空気も美味いし、こっちの人達は、実に人間味があって温かい。
誰それの子供だ、孫だと教えると、すぐ縁側にスイカだの茹でたトウモロコシだのが並ぶ。
都会の喧噪に疲れた俺には、憩いの場所なのだ。
なんて、たかだか十八年しか生きていない若造が言う事じゃないけどね。