depot~停車駅~(短編)
「じゃぁ、ばーちゃん。又、冬休みに来るよ!」
「ああ。楽しみにしているよ。頼も、体に気を付けて。ああ、これ、お稲荷さん作ったから、電車の中で食べなね」
ニコニコといつものようにばーちゃんが、タッパーに詰めた『お稲荷さん』を手渡してくれた。
ばーちゃんのいなり寿司は、お袋の作るのとは味が微妙に違う。もっと、甘くて、しょっぱい。
俺の『田舎の味』だ。
いつもお土産に持たせてくれるこの『お稲荷さん』を帰りの電車の中で食べるのも、楽しみの一つだった。
「サンキュー、ばーちゃん」
俺はありがたく受け取ると、ずっしりと重みのあるタッパーを、デイ・バッグの中に詰め込んだ。