その溺愛、全部俺にくれる?【コンテスト用シナリオ】
四話:超絶メロ沼デート作戦
〇 放課後・中庭・先ほどの場面の続き
ベンチに並んで座っている二人。
皐月「落ち着いた?」
彩羽「うん、ありがとう」
皐月、彩羽を覗き込む。泣いていないことにほっとする。
彩羽「はあー見る目がなかったなあ」
自分をバカにしていた和希を思い出す彩羽。
彩羽「私、毎回告白されると「この人こそ運命かも!」って思っちゃうんだよね」
彩羽「相手がどんな人かきちんとわからないまま、恋に恋しちゃって」
皐月「わかる」
彩羽「そっか。そこまでは私たち似てるもんね」
共感してくれる皐月に頬を緩める彩羽。
皐月「有馬さん、君が振られる謎が解けました」
真面目な顔の皐月に、彩羽吹き出す。
彩羽「それ、こないだの私の台詞……!」
彩羽「分かってる。そのノートに書いてあるようなことのせいだよね」
皐月が持っている「脱オカン!メモ」を見る彩羽。
皐月「いや違う。さっきの男も言ってただろ」
彩羽「あ、キスさせてくれなかったてやつ」
皐月「結局それで拗ねてただけだから、このメモのことは気にしなくていい」
皐月「俺はこれ、全部嫌じゃない」
ノートの中身をもう一度確認しながら言う皐月。少し嬉しそうな彩羽。
彩羽(それがいいって言ってくれるのは山縣くんだけかもしれないけど)
彩羽「運命の人のためにキスも全部残しておきたいと思うんだけど、ロマンチックすぎたのかな?」
皐月「うん」
彩羽「あ、そこは否定してくれないんだ!?」
即答する皐月に突っ込む彩羽。
彩羽「山縣くんは、その……過去の彼女とも……」
皐月「うん。してって言われるし」
彩羽「あー……」
仲間という文字がぱりんと割れる想像をする彩羽。
皐月「だけど自分からしないから怒られてた」
彩羽「それは想像がつきます」
デフォルメ絵の皐月、首から「求められるまで何もしない系彼氏」の看板を下げている。
皐月「あと俺は毎回最後の恋だと思ってるし」
彩羽「あ……」
真っすぐ澄んだ目の皐月に彩羽は少しうつむく。
彩羽「そう思うと私は今までの彼氏のこと信じ切れてなかったのかな」
皐月「そうかもね」
皐月、彩羽の腰を抱き自分のもとに引き寄せる。
彩羽「なにを」
皐月「キスしようかと」
彩羽「待って、今の話の流れで、なんで?」
皐月「最後の恋だから、これ。彩羽は最後ならいいんだよね」
離れようとするけど、腰に回す手はしっかり力が入れられていて離れない。
離れようとする彩羽と皐月の無言の攻防戦。
彩羽「まだお試しだよね」
皐月「俺はそう思ってない。彩羽とならいける気がする」
彩羽「…………」
皐月「だめ?」
彩羽を見る顔がキラキラしていて、ひるむ彩羽。
「求められるまで何もしない系彼氏」の看板がぱりんと割れているのを想像する。
彩羽「キ、キスは本当の恋人になってから! でお願いします!」
皐月「本当の恋人ってなに?」
彩羽「う……お互い、本当に大好き!!!ってなること……かな?
まだ、私たちの間に愛はないでしょ!」
彩羽(どちらかというと、まだ親子だもん……!)
皐月「ふーん」
皐月あっさりと彩羽から手を離す。
皐月「まあいいよ。元々長期戦のつもりだったし」
彩羽「好きになれるまで待っててってやつね」
離されてドキドキを落ち着けている彩羽を見て、楽しそうな皐月。
皐月「まあそれでいいよ。彩羽は待っててくれるからね。俺も待つよ」
彩羽「何を待つの?」
皐月「彩羽が俺のこと、好きになるの」
皐月、彩羽の手を取り恋人つなぎをする。小さく手にキスをする。
彩羽「あー!?」
皐月「唇にキスはしない。だけど、それ以外は約束してない」
皐月、もう片方の手を彩羽の背中に回す。
皐月「スキンシップも禁止されてないから、いいよね」
彩羽「へりくつだ!」
皐月「俺の『求められるまで何もしない』の、彼氏としてよくないんでしょ?」
彩羽「……たしかに私がそう言いましたね」
皐月「じゃあ改善していく。そういう、お試し、だよね?」
真面目に皐月は言うと、手にもう一度キスをした。
彩羽(こんなお試し、心臓が持たないのですが!?)
**
それから数日後。
〇 駅前 ガヤガヤしている様子。
一人立って、スマホを見ている私服の彩羽。
スマホの画面には『山縣くん』のメッセージ画面。
『明日日曜日 11時にA駅集合』とある。
デフォルメ絵回想
制服姿でお弁当を食べているふたり。
皐月「次は休日デートはどう?」
彩羽「自主的えらい! 練習してみよう!」
彩羽、後悔している顔。
彩羽(つい親心で「えらい!」「練習しよう!」とか言ったけど、相手役は私なんだあ~)
彩羽(今までは下校中に少し店に寄ったり、送ってもらったり、
一緒にお弁当食べるくらいしかしてなかったから。休日の待ち合わせってどきどきするなあ)
彩羽は手鏡で前髪を確認し始める。
いつもよりアレンジしている髪の毛にワンピース姿の彩羽。
皐月「かわいい」
彩羽「うわっ!」
鏡に皐月の姿がうつって驚く彩羽。
彩羽「後ろから急に出てきたら、びっくりする……よ……」
最初はハキハキと説教しようとしたのに、あまりの皐月のかっこよさに言葉がどんどんへろへろになる彩羽。
彩羽(まって……顔が良すぎるし、私服だと芸能人かなにか???????)
キラキラした全身図の皐月。スタイリッシュな私服がかっこいい。
皐月「何? じっと見られると照れるんだけど」
顔を少し赤らめる皐月以上に真っ赤になる彩羽。
皐月「行くか」
彩羽「どこに行くの?」
皐月「これ」
彩羽の「脱オカン!メモ」を取り出す皐月。
よくみると力強く書かれた「脱オカン!」に二重線が引いてあり「超絶メロ沼に彩羽を落とす」と書かれている。
彩羽「なにこれ」
皐月「山本さんと寺部さんがくれた」
デフォルメ絵で美佐と優以。それぞれ矢印で山本、寺部と書かれている。
皐月「本当は自分で決めた方がいいんだろうけど……わかんなかったから」
彩羽「うっ……」
彩羽(今まで超受け身だった山縣くんが、自分からデートに誘い、自分からコースを考えている……)
彩羽(それだけで特大の成長……!えらすぎる!)
皐月「……今またお母さんの感情になってない?」
彩羽「なってます」
皐月「ふーん」
彩羽「ごめん、嫌だよね」
反省した表情の彩羽が焦って謝る。
皐月「そうじゃなくて。ときめいてもらわないと困るから」
皐月、彩羽の手を取って、恋人つなぎをする。
赤くなる彩羽に満足気に微笑む皐月。
皐月「じゃあいこっか」
**
彩羽のアップコマ
彩羽(あれ……最高に楽しいんですが??????)
〇プリティーすぎるカフェ(ハート型の窓とか、マカロンみたいな机など)
二人は可愛い机に対面になっていて座っている。
〇回想
猫カフェで猫を前に目をハートにしている彩羽
皐月の全身に猫が乗っている
デフォルメの美佐「彩羽は猫飼えないけど猫好き。猫カフェおすすめ」
ショップでサングラスをかけている皐月
それを見て楽しそうな彩羽
デフォルメの優以「彩羽は少女漫画に憧れてる。よくあるサングラスごっこが良い」
〇回想おわり
彩羽(美佐と優以のアドバイスもあるけど、好きなことに付き合ってくれるの嬉しいな)
目の前にいる皐月を見る。皐月は店内を無表情で見回している。
彩羽(確かに何を考えてるのかはよくわかんないけど)
彩羽(一緒にいて不安な気持ちにはならないな)
彩羽(それとも、変わろうとしてくれてるのかな)
その考えに至った彩羽はむずがゆい気持ちになる。
店員「お待たせしましたー」
店員が持ってきたのは、めちゃくちゃに可愛いプレート
うさぎのオムライス、花や花の形に切られた野菜のサラダ、可愛いカップのスープ。
デフォルメ絵の美佐・優以「彩羽は和食が得意だから超・映えランチに憧れがある」
彩羽「か……かわいい……!」
目をキラキラさせて嬉しそうな彩羽。
彩羽「どれから食べたらいいか迷う……!」
皐月はその様子をじっと見ている。
皐月「彩羽のお母さんになる気持ち、わかった」
彩羽「私が子供に見えるということですか……」
皐月「違う。愛しくてずっと見てられるの」
彩羽「いと……!?」
目をまん丸にして驚く彩羽に皐月は微笑む。
彩羽、皐月の不意打ちの表情に照れる。
皐月「食べないの? 冷めるよ」
彩羽(見られると食べにくいな)
顔を上げれば彩羽をじっと見ている皐月がいてきまずい彩羽。
皐月「彩羽ってなんで永遠の愛にこだわるの?」
彩羽「…………」
皐月の言葉にフォークがぴくりと止まる。
彩羽は笑顔をつくって、皐月に聞き返す。
彩羽「皐月くんはなんで?」
皐月「……両親みたいになりたいから」
彩羽「ご両親、仲が良いんだね」
皐月「うん、すごくよかった」
皐月は優しい表情になる。それがどれだけのものかわかり、彩羽の胸は痛み、浮かない顔になる。
彩羽(そうだよね。永遠の愛が欲しい理由までが、同じなわけない)
彩羽(でも言いにくいな。私と皐月くんの理由が正反対だなんて)