正反対の彼と私の24年を経た恋の結末

33.聖女エマの企み。(ユーリ視点)

結局、婚約者を決める最終日まで俺の心は当然のようにマリーナから動かなかった。

「私、ユーリ・ハゼはマリーナを婚約者として指名する」
俺の婚約者指名に拍手が巻き起こる。
1週間もマリーナと一緒にいたことで、彼女が別格であることは皆に伝わっていた。

「ユーリ皇子殿下、困ります。私は奴隷ですよ」

マリーナが珍しく慌てた顔をしているのが可愛い。
アリア王女も、メグ王女もすっかりマリーナの虜になっている。
2人ともここにきた時の強張った顔は嘘のように柔らかい顔をして、マリーナを祝福している。

彼女達の態度の変化は当然かも知れない。
関われば関わるほどマリーナの誰とも比べられない特異さが際立つ。

彼女の慈悲深い心と公平に人を見る姿勢に心を打たれる。
でも、一人だけいつまでもマリーナに敵意を向けている者がいた。

(エマ・ピラルク、笑顔の裏でお前は鬼のような顔をしている⋯⋯まあ、明日には婚約者候補はみんな国に帰るから、もう会うこともないだろう)

♢♢♢

「おはようございます、ユーリ皇子殿下。昨夜は突然、婚前前にも関わらず私を所望されて驚きましたが、今はこうなるべき運命だったと思えています」
朝、起きると隣には、全裸で頬を染めたエマ・ピラルクがいた。

「はあ? 何を言ってるんだお前は」
俺は正直何が起きたかわからなかった。

ベッドの上に裸の俺とエマ・ピラルク。
他の人間が見れば、誤解されてもおかしくない状況だ。

「はじめてのことで戸惑いましたが、私達はやはり愛し合っていたのですね」

エマがそっとシーツをめくって、ベッドについた血痕を見せてくる。
勝ち誇ったように、俺によって昨晩自分は破瓜したのだと言いたげだ。

「お前は、何なんだ。それは、家畜の血か?」
俺の言葉に一瞬血相を変えたエマ・ピラルクはシーツだけを体に巻き部屋の外へ飛び出した。

「待て、そのような姿で外に出られては誤解を招く」
明らかに俺は罠に嵌められようとしていた。
そして、罠によって大切なマリーナを失いそうで怖かった。
< 34 / 51 >

この作品をシェア

pagetop