正反対の彼と私の24年を経た恋の結末

「皇子殿下、大丈夫ですか?馬は私に任せて、私にくっついてください」

帝国に向かう途中、暗くなるにつれ皇子の呪いの紋様が体中に浮き上がってくる。
この呪いは夜が深まるほど体を蝕んでいき、体は麻痺状態になる。
あと少しで彼は私にしがみ付くのも難しくなるだろう。

「乗馬が上手いんだな。13歳のくせに」

私は大学では馬術部だった。
馬に乗りたいというより、馬の世話がしたかった。
動物は可愛がれば可愛がるほど懐いてくれて、決して裏切らない存在だ。

ここに来て振り返れば、私が恵麻に裏切られたことは何回もある。
その度に私は彼女を嫌いにならないよう努めてきた。

「お褒め頂き、ありがとうございます。ユーリ皇子殿下、今日はこれ以上は移動しない方が良いかと思われます。野営の準備をするようにご指示ください」

明らかにユーリ皇子殿下の私の腰を掴む力が弱くなっている。
呪いの力で筋力が低下し、体の自由が効かなくなってきているのだろう。

「奴隷なのに、俺に指示か。まあ、いいだろう。おい、ここで野営の準備をしろ」
ユーリ皇子殿下の指示で野営の準備がなされた。

♢♢♢

ユーリ皇子殿下は夜が深まると呪いによって、身動きが取れなくなった。
彼はあまり周囲の人間を信用していないのか、自分がテントに入ると人払いをした。
私は彼の近くにいるように言われたので、そのまま彼の側に待機している。

「ユーリ皇子殿下、何か欲しいものはありますか?」

ユーリ皇子殿下の身体中に黒い紋様が浮き上がっている。
周囲の騎士も得体の知れない呪いを怖がり出した。

「ない。お前はそばにいろ。この呪いはどうにかならないのか?」
ユーリ王子殿下が息苦しそうに私の手首を掴んでくる。

「苦しいですよね。エマ・ピラルク男爵令嬢を探してください。彼女は聖女の力を持っています」

「帝国にいるのか?ピラルク男爵なんて聞いたこともないが」

「すみません。どこの国の出身かはわかりかねます。ただ、ピンク髪にエメラルドグリーンの瞳をした可愛らしい方です」
何ていい加減な小説だろう。
私は恵麻をモデルに可愛らしい容姿のヒロインを作り上げたが、彼女の出身まで考えていなかった。

「そいつじゃないと、呪いは解けないのか?」
私が申し訳なく思いながら、彼の問いに返事をしようとすると突然外が騒がしくなった。

「何事ですか?」

「騎士に扮した奴らの中に裏切り者がいたんだろう。こんな体じゃ、俺もここでおしまいだな」
ユーリ皇子殿下が淡々と言った言葉に、私は地面に転がっていた剣をとった。

「何のつもりだ」

「私が、あなたを守ります。この命にかけても。私は奴隷ですよね。奴隷らしい仕事をさせてください」
テントが刺客の剣のひっさきに引き裂かれる。

「ユーリ・ハゼ、死ねー!」

剣を持った大男がユーリ皇子殿下に襲いかっかってくる。

このようなエピソードは書いた覚えがない。
しかし、そんなことは関係ない、ユーリ皇子は約束通り私が守る。

私は剣を思いっきり刺客の首に突き刺した。
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