東雲くんは【平凡】がわからない！
彼女は【転校生】
「転校生を紹介します」

教卓にいる先生の声が教室中に響く。
すると教室の目、すべてが一斉にわたしの方を向いた。
その目は大きな興味とちょっとの警戒に満ちていた。

カツカツ、と先生が後ろの黒板にわたしの名前を書いた。

若葉　花

「では、若葉(わかば)さん、自己紹介お願いします」

わたしに向かって、優しく微笑みながらそう言う先生。

「はい！」

わたしもとびきりの笑顔と返事で返した。

教室をぐるりと見渡し、口角をあげる。
頑張らなきゃ。第一印象は大切。
明るく、親しみやすく、そして…ごくごく平凡に。

「若葉 花(はな)です。横浜から引っ越してきました」

決めたの。
この転校で私は生まれ変わる。

「仲良くしてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします！」

ごく普通に過ごして、ごく普通に友達を作って、ごく普通に青春を送る。
もう「あんな」ことはしない。


…挨拶を終えたわたしをみんなが拍手で迎えてくれる。

よしよし、まあ第一印象は悪くないだろう。
内心ホっと胸を撫で下ろしながら、改めて教室を見回す。
今日から新しく仲間に入れてもらうクラス。
パッと見た感じ、明るく楽しそうな雰囲気だ。

これならきっと上手く………

「！？」

わたしの目がある1点で止まった。
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