『人生 ラン♪ラン♪ラン♪』 ~妻と奏でるラヴソング~
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 痛っ! 
 誰かに足を踏まれた。気づくと、3駅先の乗降客の多い駅に着いていた。若い頃からのことを思い出してボーッとしていたわたしは、この駅で降りる客の邪魔な存在になっていたようだ。
 誰かに踏まれた靴跡が残る自分の靴先に目をやっていると、そこをまた踏まれた。今度は乗り込んできた人に。
「ごめんなさい」
 謝ったのは小太りの男性だった。50歳くらいだろうか。わたしは「いいえ」と返して、その男性から目を逸らせた。悪気があってやったわけじゃないから怒るわけにはいかなかった。
 その男性と共に乗り込んでくる人たちに押されながら、奥の方へ押しやられてギュウギュウ詰めになった時、若い男性の声が聞こえた。
「部長、今日は同行よろしくお願いします」
 頷いたのは、わたしの靴を踏んだ男性だった。
 上司と部下だろうか。とすれば、取引先へ同行するための直行なのかもしれない。話を聞くともなしに聞いていると、今日は新規採用を成功させるためのクロージング商談のようで、なんとか成功させたいと、部下が上司を引っ張り出したみたいだった。
 部下が期待しているぞ。頑張れ、部長! 
 そんなエールを心の中で送っていると、自分が支店長、そして、支社長になった時のことを思い出した。

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