亀の愛は万年先まで
────────────・・・・



「アエ〜、ノンノンが泣いてる。
私は息子と仕事の打ち合わせを・・・」


そこまで言って、思い出した。
アエには和希のお守りをお願いしていたことに。


「おいで、ノンノン。
おばあちゃんがいるから大丈夫だからね。
お父さんもお母さんも仕事に行くけど、ノンノンにはおばあちゃんがいるから大丈夫。」


ノンノンを片手で抱っこをした後、今日もミルクを作っていく。


「まったくねぇ・・・。
お父さんは2人も子どもを作ってねぇ。
和希と望で、“希望”なんてつけてねぇ。」


ノンノンにミルクを飲ませながら今日もノンノンに言う。


「ノンノンは普通の女の子になっても良いとおばあちゃんは思うけどねぇ。
おばあちゃんが和希のことを優秀な秘書に育てるから、大丈夫だと思うんだけどねぇ。」


なんだか最近、ノンノンがあまりミルクを飲まないような気がする。


「あれ・・・?
こんなにミルクをこぼして・・・どうしらの・・・?」


なんだか、急に口が回らなくなった気がする。


「あれ・・・違う・・・。
この子はノンノンじゃない・・・。」


ノンノンではない違う赤ちゃんにミルクをあげていたことに気付き、慌ててアエのことを呼ぶ。


「アエ!!!アエ・・・!!!
ノンノンがいない・・・!!!!
ノンノンが・・・ノンノンがいなくなった・・・!!!
主からの指示かもしれない・・・!!!
秘書なのに子どもを2人も生んだから・・・!!!」


そう叫んだ後に、思い出した。


思い出した・・・。


「あれ・・・あれ・・・?」


ご主人様が死んでしまったこと・・・。


なんでか急に思い出した。


私の耳元で“誰か”がそう言ってくるから、思い出したのかもしれない。


「ご主人様が・・・死んだ・・・。
私が照之の子どもを妊娠したと知って、安心した顔でこの世を去った・・・。」


どこかで見たことがあるような、でもないような、そんな顔の男に向かって言う。


「遺言書に、私を加藤の“家”の当主とすると書いて・・・お父さんとお母さんをあの家から追い出して、逝っちゃった・・・。
息子達が成人するまでは、小関の“家”を亀に一任するとまで書いて、財閥の主からの捺印まで添えて、逝っちゃった・・・。
私のことやお腹の子どものことを最後まで守ってくれて、逝っちゃった・・・。」


思い出した・・・。


急に、思い出してきた・・・。


思い出したくないことまで思い出してきた・・・。


「照之は・・・?
病気はまだ治らない・・・?」


私が妊娠したと知った照之は、照之のお父さんにちゃんと話をつけた後に必ず私のことを迎えに来ると言っていた。


そう言ってくれていて・・・


私はご主人様が逝ってしまった後も照之のことを待ち続けていた。
お父さんとお母さんがいなくなったあの家で、でもご主人様が残した2人子どもと、そしてアエと一緒に、大きくなってきたお腹を擦りながらも秘書として頑張り続けなが待ち続けていた。
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