亀の愛は万年先まで
そんな私の元に来たのは、照之の家から来た遣いの人間だった。
”照之は二度と亀と会うことはない。
増田でも永家でもない他の家の娘と結婚をさせることに決まった。
お腹の子どもを認知することもない。“
照之のお父さんが書いたと思われる簡素な手紙だけを置いて、照之は私の元からいなくなった。
照之もいなくなった。
いなくなってしまった・・・。
「照之に会いたい・・・っっ。」
照之が迎えに来ることはないと覚悟を決めていた私の元に、信じられないことにしばらく経ってから照之が来た。
”家に監禁されている“と笑いながら言って・・・
”その間に病気になって、療養しているこの時間に抜け出せそうになってきたから抜け出してきた“と、そんなことも言って・・・。
ご主人様の時のように、やけに痩せたその顔で笑っていて・・・。
「会いに行かないと・・・っっ。
あの饅頭屋まで、会いに行かないと・・・っっ。
あそこで待ち合わせをしてるの・・・っっ。
”病気が治ったら次は必ず迎えに行くから、それまで秘書として頑張れよ、亀。”って・・・。
照之はそう言ってた・・・、あの時にそう言ってた・・・。
そろそろ病気が治っているかもしれない・・・。
待ち合わせはあの饅頭屋なの・・・だからあの饅頭屋に・・・」
あれ・・・?
あれ・・・?
また、思い出した。
私の耳元でやっぱり誰かの声がしているからか、思い出したくないことを思い出してしまった。
照之も死んでしまったと、思い出した。
それを思い出し、誰の赤ちゃんかは分からないけれど赤ちゃんは落とさないよう必死に抱き締めながら叫んだ。
その叫びは自分でも何を言っているのか分からなかった。
自分でも何を叫びたいのかよく分からなかった。
なんだか、全然分からない。
全然分からない。
1つだけ分かるのは、ご主人様も照之もいなくなってしまったということ。
もう二度と会えないということ。
もう絶対に私のことを迎えに来てくれることはないこと。
ああ・・・
どうして私は亀なんだろう・・・。
死ぬまであと何年歩き続けなければいけないんだろう・・・。
ノロマな亀は、ご主人様と照之の所まで逝くのもこんなにノロマで・・・。
ご主人様も照之も迎えに来てはくれないこの世で、私はあとどれだけ頑張り続けなければいけないんだろう・・・。
声にならない叫び声を上げ、持っていたミルクも目の前の男に投げ付けた。
そんな私の手をその男に掴まれ、抱き締められた。
それには凄く怖くなり、私は必死に逃げる。
赤ちゃんは落とさないように強く抱き締め続け、でも叫びながら必死に逃げる。
ご主人様ではなく照之の名前を呼びながら、逃げる続ける。
ご主人様が見付けてくれた男の人、ご主人様と同じくらい私のことを愛してくれ、財閥とは何の関係もない人なのに私の“家”のこともこんな私自身のことも愛してくれた照之のことを呼び続ける。
私達の赤ちゃんのことを見ることもないまま逝ってしまった照之のことを呼び続ける。
迎えに来ると言っていたから。
次は必ず迎えに来ると、照之はそう約束をしていたから。
だから私は秘書として頑張っていた。
凄く凄く、凄く凄く頑張っていた。
照之と約束をしていたから、私は頑張っていた。
ノロマなダメ秘書の亀と呼ばれていた私は、“増田財閥でただ1つ機能をしている分家の“家”とその秘書の“家””と財閥の主から言われ、労いの言葉を貰えたことだってあるような・・・そんなぼんやりとした記憶だってある。
そんな私の最後はコレだった。
知らない男から襲われる最後。
これが私の末路だった・・・。
こんな末路だった・・・。
そう思いながらも最後まで逃げ続けていた時・・・
「迎えに来た。」
深く深く、やけに深く響く声が聞こえ・・・
大きな“何か”が、私のことを包んだ。
”照之は二度と亀と会うことはない。
増田でも永家でもない他の家の娘と結婚をさせることに決まった。
お腹の子どもを認知することもない。“
照之のお父さんが書いたと思われる簡素な手紙だけを置いて、照之は私の元からいなくなった。
照之もいなくなった。
いなくなってしまった・・・。
「照之に会いたい・・・っっ。」
照之が迎えに来ることはないと覚悟を決めていた私の元に、信じられないことにしばらく経ってから照之が来た。
”家に監禁されている“と笑いながら言って・・・
”その間に病気になって、療養しているこの時間に抜け出せそうになってきたから抜け出してきた“と、そんなことも言って・・・。
ご主人様の時のように、やけに痩せたその顔で笑っていて・・・。
「会いに行かないと・・・っっ。
あの饅頭屋まで、会いに行かないと・・・っっ。
あそこで待ち合わせをしてるの・・・っっ。
”病気が治ったら次は必ず迎えに行くから、それまで秘書として頑張れよ、亀。”って・・・。
照之はそう言ってた・・・、あの時にそう言ってた・・・。
そろそろ病気が治っているかもしれない・・・。
待ち合わせはあの饅頭屋なの・・・だからあの饅頭屋に・・・」
あれ・・・?
あれ・・・?
また、思い出した。
私の耳元でやっぱり誰かの声がしているからか、思い出したくないことを思い出してしまった。
照之も死んでしまったと、思い出した。
それを思い出し、誰の赤ちゃんかは分からないけれど赤ちゃんは落とさないよう必死に抱き締めながら叫んだ。
その叫びは自分でも何を言っているのか分からなかった。
自分でも何を叫びたいのかよく分からなかった。
なんだか、全然分からない。
全然分からない。
1つだけ分かるのは、ご主人様も照之もいなくなってしまったということ。
もう二度と会えないということ。
もう絶対に私のことを迎えに来てくれることはないこと。
ああ・・・
どうして私は亀なんだろう・・・。
死ぬまであと何年歩き続けなければいけないんだろう・・・。
ノロマな亀は、ご主人様と照之の所まで逝くのもこんなにノロマで・・・。
ご主人様も照之も迎えに来てはくれないこの世で、私はあとどれだけ頑張り続けなければいけないんだろう・・・。
声にならない叫び声を上げ、持っていたミルクも目の前の男に投げ付けた。
そんな私の手をその男に掴まれ、抱き締められた。
それには凄く怖くなり、私は必死に逃げる。
赤ちゃんは落とさないように強く抱き締め続け、でも叫びながら必死に逃げる。
ご主人様ではなく照之の名前を呼びながら、逃げる続ける。
ご主人様が見付けてくれた男の人、ご主人様と同じくらい私のことを愛してくれ、財閥とは何の関係もない人なのに私の“家”のこともこんな私自身のことも愛してくれた照之のことを呼び続ける。
私達の赤ちゃんのことを見ることもないまま逝ってしまった照之のことを呼び続ける。
迎えに来ると言っていたから。
次は必ず迎えに来ると、照之はそう約束をしていたから。
だから私は秘書として頑張っていた。
凄く凄く、凄く凄く頑張っていた。
照之と約束をしていたから、私は頑張っていた。
ノロマなダメ秘書の亀と呼ばれていた私は、“増田財閥でただ1つ機能をしている分家の“家”とその秘書の“家””と財閥の主から言われ、労いの言葉を貰えたことだってあるような・・・そんなぼんやりとした記憶だってある。
そんな私の最後はコレだった。
知らない男から襲われる最後。
これが私の末路だった・・・。
こんな末路だった・・・。
そう思いながらも最後まで逃げ続けていた時・・・
「迎えに来た。」
深く深く、やけに深く響く声が聞こえ・・・
大きな“何か”が、私のことを包んだ。