自らを越えて

結果が出始めているぞ、お三方

カナは「イエス」でミカは「うーん、どちらとも云えない、ですね」俺は「…ノーです」と答える。次は3番目だ。
「次は、あなたは、他人に時々嫌悪の感情をいだきますか?」
「イエス!」「ノーでがんす」「うーん、イエ…い、いやノーです」カナ、ミカ、俺の解答だ。俺が云い淀んだのは他人よりは圧倒的に自分に対してその手の感情をいだくからだ。ただし他人に全然抱かないということもない。
「(結果を記してから)よっしゃ、と。次ね。あなたは、人と人との狭間に入って身動きが取れなくなることがありますか?」
「あります。さっきがそうでした。イエスです」とミカ。「あたしはノー、ノー!ところでいつまでこんなことやるの?朗子さん」とはカナだが、それに「うるさい」と大伴さん。俺は「イ、イエス」とどもって答える。なぜかと云うにさきほどのF8湧き水の滝での体験があったからだ。大伴さんとカナとの間で確かにそうなった。しかしもともとこんなグループでの(まして女性たちとの!)行動など皆無の男だったし、その基点に戻って云うなら本来は「ノー」なのだ。絶対孤独男の俺であったから「人と人との狭間」になど入りようがないのだし、仮に万が一そうなったとしても「俺には関係ないよ」とどちらにも関わろうとしないだろう。だから本当は「ノー」なのだがこれが「イエス」になったのはこの今が、〝自らを越える〟この行程が多少なりとも俺に変化をもたらしているからだと思う。
「ふんふんふん、なるほどね。結果が出始めているぞ、お三方」何の結果だか、独り言つ大伴さんの言が気になる。
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