自らを越えて

最後の質問

「では最後の質問をします。あなたは、何につけ限界を感じることがありますか?これは要するに…いっつも同じ、この毎度お決まりのパターンを抜けようと思うんだけど、抜けきれない。何か四方を壁に囲まれているような気がするか?ということね。どうかな?みんな」
「ふん、そんな抽象的なことを聞かれてもさ、あたしは…」とクレームをつけようとするカナを「ちょっと待って」と制してから大伴さんが質問の補足をする。
「実はさ、この質問は私が目にして実に身につまされたものなのよ。いい?この質問への答えを常識的に考えちゃダメよ。極端なことを云うと、自分はいったい何のために生きているのか?人生ってなんだろう?この世界っていったい何のためにあるんだろう?…っていうレベルまで掘り下げて考えて。それで答えを出してちょうだい。いい?イエス、ノーのあとにはその理由まで聞くからね。ゆっくりでいいからちょっと考えてみて」と来た。俺は目を白黒せざるを得ない。こんなことまで聞かれるとは思わなかったし、何より改めてこの大伴さんという人物の底が知れなくなってきた。俺とは真逆の快活さ、ある種人を人とも思わない大胆奔放さ、なんでも事を通してみせるというその意志の強さ…等々驚きの連続なのだが、それだけではない、人と世界への深い洞察さえもがあるようだ。しかしそんな感慨に耽ってる暇もなく、ここはとにかく答えを云わなければならない。少なからず頭の中がパニくる。
「わー、大伴さん、分かんないですよ。そんなムズカシイこと聞かれても。明日迄じゃダメですか?」とミカが俺の状態を代弁してくれる。一方カナは「わたしはノーとだけ云っておくよ。理由は、そんな壁なんて感じたことはないからだよ。ザッツオーバーだね」といとも簡単だ。
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