自らを越えて

詩・マルドロールの歌

その悪魔派なる詩編がどんなものかと云うと、才ある諸君らには周知のことだろうが、敢てそれこそ〝象徴的〟な詩を一編、ここでご紹介しよう。著者はロートレアモン伯爵と云って、題名は〝マルドロールの歌〟というのだが、実は…。

「マルドロールの歌」
おさなごの頬を切り裂き泣きわめく、その顔見てはいたわりて、
汝(な)と我のきずな見しという彼の非人、マルドロールの悍しさに、
その闇厭いて、ひとりだに、吾(わ)を知らざらん外(と)つ国へと、
はるけくも斯く来たりしものぞ。
さるを…

「見て!あの非人!」
それ誰さし忌むや、云いおるや。
われ汝らを知らず、汝らも我を知らざるべし。
などさは云うぞ!?
非人の所業その返しとて、な裂きそ我魂、さ言葉のナイフもて。

愛の切り裂き受けたとて、
泣いて応うべき我ならなくに…
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