自らを越えて
われら4人組、ファイトーっ!
「かっちょいい、カナ」「おう、ナイス。ビシッと決めたわね、カナ」ミカと大伴さんが云い俺は無言である。「よし。これで全員が制覇したことだし、ここでエールを上げましょうか。私が居たバレー部の仕方を教えてあげる。いい?」と云って大伴さんが強引に円陣を組ませる。右足をそれぞれ一歩前に出して円陣としたのだ。「おいおい」とブーたれるカナを「まあまあ」とミカがなだめる。「わたしが〝1人はみんなのために〟と云うからあんたたちは〝みんなのために〟と合わせて。いい?それからわたしが〝せーの〟で、あとは〝絶対勝つ!〟と3回。そして最後に…えーっとどうしようかな。本当はここで学校名を、例えば私と村田君の✕✕高を入れて〝✕✕高ファイト!〟と云うからあんたたちの〝オォー!〟で締めるんだけど、そうね…」「4人組でいいんじゃないですか?」ミカが云う。「うん、よし、それだ!それに〝われら〟をつけて〝われら4人組〟としよう。いいね?じゃ行くよ」「ちゃんちゃらおかしくて…」カナがつぶやくのを大伴さんが睨みつける。「しっ、カナ」ミカが制止したのを見届けてから大伴さんが「じゃ行くよ!1人はみんなのためにー!」と大声で先導した。「みんなのためにー」3人が続いたが声が揃わず小さい。「ダメ!そんなんじゃ。これが試合だったらイチコロで負けてしまうよ。声を合わせて。大声で!いいね?よし、もう1回」でやり直しとなる。「1人はみんなのためにー!」「みんなのためにー!!!」カナは小声のままだったが俺とミカが声を張り上げた。「よし。せーの!」「絶対勝つ!絶対勝つ!絶対勝つ!」と三唱するうちになんに勝つんだか知れないがそんな気になるのが不思議だ。『なるほどな。これが団体スポーツの良さ、心意気というものか』などと心中で思う。俺には悉皆経験のないことだった。いよいよ次が最後だ。「われら4人組、ファイト!」「オォー!!!」と来て大伴さんが地面を右足でひとつ踏み鳴らす。