偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「……もしかして、誘ってます?」
「あら、いやだわ先生。そこは察してくださいな」

 やんわりと確認をすると、婦人は微笑みながらも目を逸らす。
 やはり“そういう事”らしかった。

「すみません。しかし……期待させてはいけないと思いまして」
「……と、申しますと?」
「実は、俺は……女性を抱けない身体でして」

 カルステンは、過去のとある出来事で性機能障害(ED)となっていた。
 足の不自由さは関係なく、精神的なものだ。
 事前に言っておいた方がいいだろうとの判断だったが、どうやら婦人には間違って伝わったらしく……。

「まあ……それは……」

(ん? あれ……? もしかして、なんか誤解させた……!?)

 婦人は少し頬を赤らめて考えた後、真剣な表情になった。

「先生」
「は、はい」
「ぜひ、うちにいらして、その辺りのお話を詳しく」
「え、ええぇぇっ!?」
「先生のロマンスを、ぜひ聞かせていただきたいわ!」

(絶対なんか勘違いされてるーー!?)

 正すためにはっきりと言うのも恥ずかしく、結局カルステンは婦人宅でありもしない話をする羽目になってしまったのだった。


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