偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「僕には、そんなに大事にされているようには見えませんでしたけどね」
「そりゃ、ダニエルがいなくなって何かが狂ってしまったからだろ。それまでは大切にされて……」
「仕方がありません。ゴンドル族同士は、どうあがいても惹かれあってしまうんです。それに、叔父さんもダニエルさんも、元々はそのつもりだったんでしょう?」
 
 ポポロムは、朗らかな表情に戻っていた。

 戦争が終わった時、ゴンドル族の生き残りは数百人だった。
 そのほとんどが現在でも政府の管轄下での生活を強いられている。
 だからポポロムとリアが、自由の身でゴンドル族同士で生きていきたいと願えば、そうするつもりだった。
 しかし、カルステンが見てもリアの気持ちがアルフレッドにあることは一目瞭然であった。

「そりゃまあ、そうだが……。でも、リアちゃんの気持ちを尊重してだな」
「僕の気持ちは尊重してくれないんですか?」
「おまえ、ちゃんとリアちゃんを好きなのか?」
「……好きですよ?」
「今! ちょっと間があったぞ!」

 カルステンの懸念していたことが、はっきりしてしまった。
 ポポロムは昔からゴンドル族であることを誇りに思っていた。人間から迫害されるかもしれないとわかっていても、決してその名を捨てなかった。一族の存続を願い続け、目の前に現れたリアを大切にしたい気持ちはカルステンにもわからなくはない。しかし、これではおそらく独りよがりである。
 
「大丈夫ですよ。僕もちゃんと考えてます。それに、リアさんほど素敵な女性は他にいません。僕がきっと、幸せにしてみせます」

 ポポロムはにこやかに言うが、カルステンの心配は募るばかりだった。


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