偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「先生……。とても、嬉しいです。でも……私でいいんですか……?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だって、私は……」

 そこで、リアさんは言葉を止めて視線を逸らした。
 ああ、おそらくリアさんはアルフレッドさんとのことを覚えている。
 それを気にしているのだ。

 テオさんとの記憶は失くしても、心の奥深くにはアルフさんの存在があるのだろう……。
 それでもいい。

「かまいませんよ」

 僕は、不安にさせないように笑顔を作った。

「全部まるごと、あなたを愛します」

 そう言うと、リアさんは泣き声を殺しながら大粒の涙を溢した。

「ううっ……」
「泣かないで、リアさん」
「ありがとう……ございます……。そんな風に言ってもらえたのは、初めてです……。よろしく、お願いします……」

 僕は雑踏の中、リアさんの涙が他の人の目に触れないように抱きしめた。

 好奇の視線をリアさんに勘付かれないように包み込む。
 これでいい。これでいいんだ。
 リアさんを幸せにするのは、僕の役目だ。
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