偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 病院の前で、僕は再びテオさんと対峙した。
 警察官二人に挟まれ、ゆっくりと歩いてくる。
 テオさんは手錠をかけられてはいるが、抵抗したりせず大人しいものだった。
 特に悲観的な表情でもなく、それどころか笑みを浮かべていた。
 本当に、見た目は好青年なのに。
 事件のことを知らなければ、僕だって表の顔に騙されそうだ。

 警察からテオさんを引き受けると、精神科の一室へ案内した。
 病室の構造は、他の通常病棟とぱっと見変わらないが、監視カメラが付いているのと、壁の一部がマジックミラーになっている。

「テオさん、あなたには入院してもらいます」
「入院? 俺、どこか悪いのかな?」

 テオさんはいたって普通の態度だった。
 裏の顔を知っているだけに、余計に腹が立つ。
 しかし、医者である僕がここで私怨を持ち込むわけにはいかない。
 僕の方こそ、平静を装う必要がある。

「あなたは、心の病気ですよ。自覚してくださいね」
「そっかー。心の病気かー」

 お互いにこやかに。まるで狐の化かし合いのようだ。

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