偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「これから、少しずつ治していきましょうね」
「俺、治るのかな?」
「そうですね……」

 ここは医者として、本当のことを言わなければならないだろう。

「本当の事を言いますね。“完治”という意味では、治りません」
「そうなんだ……」

 意外にも、テオさんは残念そうな顔をした。
 一体、彼の本心は何なのだろうか?
 会話を続けて、彼という人物を知らなくてはならない。

「でも、完治なんてしなくていいんです」
「どう言う意味?」
「社会復帰は無理でも、日常生活ができればいいんです。それこそ、お兄さんやお姉さんに迷惑をかけないように」

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