偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「本音?」
「あなたから発せられる素敵な言葉は、すべて逆の意味に聞こえるんですよ」

 いけないのに。
 僕はつい目の前の患者に対して、高圧的な態度を取ってしまう。

「あなたの言う「好き」は、愛情ではありません」

 しかし、これは私怨ではない。
 彼を知るために必要な挑発だ。

「ふぅーん……」

 テオさんは、顎に手を当てて少し考えた後、

「先生、おもしろいね」

 普通の人なら騙されるであろう、とびきりの笑顔で言った。
 そしてすぐに、挑発を返すような不適な笑みに変わる。

「やっぱ、好きになりそうだなぁ……」

 僕の挑発に気づいている。
 これは絶対に、僕とリアさんの関係を悟られるわけにはいかない。

「はははは……。それはご遠慮いただきたいですね」

 腹の探り合いは終わりだ。
 僕は必ず、テオさんという人間を理解し、治してみせる。
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