偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 テオは、お兄様を真似て花を摘んでいた。
 まだ小さかったためか、うまく摘めずに花びらがバラバラになってしまった。
 それを見てテオは泣き出した。

「うわあああん。ぼくもねえさんに、ねえさんに……」
「テオ、力を入れすぎちゃったのね。ほら、そっとよ、そっと」
「そーっと、そーっと……」

 うまく花を摘めて、テオは笑顔でその花を渡してくれた。

 今思えば、テオは昔から力加減のできない子だった。
 よくお兄様のものを壊してしまっていたことを、思い出す。

 私はきっと、
 あの時の花だったのだ。



 ──目を覚ました時、乾いた涙の跡があった。

 テオと向き合わなければならない。
 楽しかった夢は、もう……終わったのだ。


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