偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 ポポロム先生と叔父様に連れられて病院に来ると、薄暗い一室に案内された。
 壁が一部ガラス張りになっており、これがマジックミラーになっているそうだ。
 テオがこちらに気づくことはない。
 安心して見られるけれど、心のどこかで直接会いたいという気持ちがあった。
 でも今は、お互いのために、それは絶対にやってはいけない事なのだ。

「テオさんの声を、オンにできますが……。聞きますか?」
「お願いします」

 先生がスイッチを入れると、テオの声がスピーカーから聞こえた。
 
「暇だなー」

 数週間ぶりのテオの声。
 あの逮捕の時の事は確かに覚えているけれど。
 でも今の私には、()()()()()に感じられた。

「差し入れの本も、もう全部読んじゃったんだよね」

 病室の床の隅に、本が積み上げられていた。
 そういえば、テオは家族の中でも一番の読書家だった。
 おそらく、私なんかよりもずっと知識量があるし、頭の回転も早かった。
 こんな事にならなければ、テオはきっと立派な人間になっていただろう。
 今更悔やんでも仕方がないけれど、残念でならなかった。

「テレビはないし……」

 テオは退屈そうに、積み上げられていた本を一冊手に取り、

「この本、読んじゃったから、もういらないよね」

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