偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「リアさん、大丈夫ですか? 辛いなら、ここを出ましょう」

 ずっと黙って泣いていたからか、先生が心配してくれた。

「……大丈夫です」

 涙を流せば流すほど、気持ちの整理がついてきたような気がする。
 ハンカチを出すのもためらわれ、手の甲で半ば乱暴に涙を拭った。

「……次は、お兄様と一緒に来たいです」
「そうですか」

 先生は、ハンカチを取り出して私の涙を優しく拭いてくれた。
 その時、スピーカーから再びテオの声が聞こえてきた。

「ねえ、ポポロム先生呼んでよ〜。退屈で仕方がないよ」
『ポポロム先生は診察中です。他の先生を呼びましょうか?』
「え〜。ポポロム先生がいいな。あの人、おもしろいし」

 どうやらテオは、ポポロム先生を慕っているようだ。
 そこからは、ご機嫌に鼻歌を歌いながら踊っていた。
 そして踊りながら、

「兄さんと姉さん、どうしてるかな」

 そう聞こえた途端、先生は慌てるようにスピーカーのスイッチを切った。

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