偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜



 私と先生は、それからも何度か逢瀬を重ねた。
 季節はすっかり冬になり、街はイルミネーションで彩られている。
 とても綺麗な景色のはずなのに。

「あっ、リアさん。クリスマスツリーが飾ってありますよ!」

 ポポロム先生は相変わらず優しい。
 あの時──すべてを思い出した時から、先生は私に必要以上に触れようとしない。
 事情を知っているから……。とても、大切にされている事が痛いくらいわかる。
 仕事も大変なはずなのに時間を作ってくれて、私の前ではできるだけ笑顔でいてくれようとする。
 なのに私は上の空で、作り笑いを返すのが精一杯だった。

 先生とこうしてデートを重ねても……心が躍らない……。
 先生の事が嫌いなわけじゃない……でも……。
 記憶が戻ってから、私はずっと違和感を抱いている。
 それに、私の気持ちは……。
 もう、ここにはない──
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