偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

23・ほんとうの気持ち sideリア


「ポポロム先生……」
「なんでしょう?」

 その日の夜、私は先生の前に立ち、深く頭を下げた。

「申し訳ありません……。私たちの関係を、終わりにしていただけませんか?」

 本当に、身勝手な事だと思う。先生の優しさは計り知れない。
 私はそれに何度救われたことか。裏切るようで心苦しかった。
 返事があるまで、少し時間があった。
 おそらく数秒の事だっただろう。けれども先生が声を発するまで、ずっと頭を下げていた。

「なぜ……ですか?」

 先生の声を聞いて、私はゆっくりと顔を上げる。

「先日、テオを見て思いました。やっぱり私は、あの家に戻りたいと」

 記憶が戻ったからだけではない。
 私は、今のお兄様と、テオと、きちんと向き合いたいと思ったからだ。

「あなたが、家に戻る事に反対はしません。ですが、僕との関係を切る必要はないでしょう?」

 先生は怒る事もなく、穏やかな表情だった。
 しかし、だんだんと不安そうな表情になっていった。

< 154 / 252 >

この作品をシェア

pagetop