偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 今の穏やかな先生を見ると、まったく想像がつかない。
 けれども、先ほどの先生の態度を考えるとやはり心のどこかでは……。

「リアちゃんを初めて見た時は、本当に嬉しそうだったよ。だけど、こればっかりは……」

 初めて見た時。
 そうだ、私と先生はいつ出会ったのだろう?
 疑問に思っていた事を、叔父様に訊ねてみた。

「ああ……。たしか、リアちゃんが1歳くらいの時だったかな。家族でここへ遊びに来て──」

 1歳!?
 そんな昔から私を同族の女性として見ていたのかと思うと、落胆するしかなかった。
 でも、生き残りが私たちだけだったと思っていたのなら、仕方のない事なのだろうか。

「リアちゃん。君は、君の帰るべき場所へ帰りなさい。君はもう自由だ」
「はい。私……家に戻ります」

 もう一度、叔父様に向かって深々とお辞儀をした。
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