偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 しかし、あの痛ましい事件が起きてしまった。
 リアさんが僕の勤める病院に運ばれて来た時は驚いた。
 おそらくリアさんがゴンドル族だったため、同族である僕がいる病院に救急隊から連絡が入ったのだろう。

 僕が救いたかった。
 僕が幸せにしたかった。
 僕は今まで、一体何のために頑張ってきたんだろう……?
 
 暗がりの中、ベッドに顔を埋めて涙を流した。
 微かに残るリアさんの香りが、胸の内側をくすぐる。
 外から車の音が聞こえて、やがてそれはバタンと扉を閉める音がして遠ざかっていった。
 タクシーを呼んだのだろう。

「おーおー。電気も付けずに」

 そう言って、ノックもなしに叔父さんが入ってきた。
 急いで涙を拭く。
 
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