偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 この人は、僕が辛い時ほどこうやって飄々とした態度でやってくる。
 初めて出会った時からそうだった。
 優しくて、厳しくて、時々何を考えてるかわからない、それが僕の養父(ちち)
 患者のご婦人方からはすごく慕われているのに、特定の相手を見つけようとしない。
 最初は、僕という存在が邪魔をしているのではないかと思っていた。
 でもこの人は本当にそういう気がないのだと、大人になってようやく気づいた。
 
「叔父さん……」

 声を発するとまた泣いてしまいそうだった。
 この年齢になって失恋して泣くなんて。
 情けないと思われるかもしれない。

「おまえの気持ちはわかってるつもりだ。けどな、言っただろう? リアちゃんの気持ちを尊重しろって」
「……はい。すみません、取り乱しました……」

 本当に。気持ちを切り替えなければ。
 
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