偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「お兄様は、テオの異変に気づいていたんですね?」
「……そうだ」

 ああ、だからあの時も、あの時も。
 お兄様はテオを警戒していたんだ。
 それなのに、私はそれに気づかず、お兄様の言葉を信じられずに……。
 なんて馬鹿な事をしてしまったんだろう。

「お兄様、テオはもういません。簡単には出てこられません」

 もうテオを恐れることはないのだと、私は訴えた。
 でも、それでも。
 きっとお兄様の心の奥底には、まだ恐怖心が残っているのだろう。
 幼少期からのトラウマは、根付いてしまって簡単には取り除けないと聞いた。

 だから……。

「私を憎む事でしか愛せないなら、それでもいいです。
 私は、すべてを受け止める覚悟で戻ってきました」

 お兄様を困らせてしまっただろうか。
 でも、私はもう逃げないと決めたのだ。
 それでもお兄様は私を突き放そうとする。

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