偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 お兄様に、ふわりと抱き上げられた。
 今のは聞き間違い?
 やや乱暴に寝室の扉を開けて、私はベッドの上に降ろされた。
 そういえば、お兄様はいつも無理矢理ではあったけれど、それは私が抵抗していたからであって。
 私を憎んでいる、恨んでいると言いながらも、暴力や痛みを伴う事は決してしてこなかった。
 叔父様の言うとおり、やはり脅迫概念に囚われていたのだろう。

 私は、お兄様のすべてを受け止めきれるだろうか?
 以前のような事はないとはいえ、私もお兄様も、傷を負ってここまで来た。
 その傷を再び負うかもしれない。怖くないと言えば、嘘になる。
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、お兄様は私の上に覆い被さるようになりながらも手を出してこようとはしなかった。
 
「どうやら俺はとても……嫉妬深いようだ……」

 今まで自覚がなかったのかと、思わず笑ってしまった。

「ふっ、ふふっ……」
 
「何がおかし……」
「ふうぅ……ううぅぅっ……」

 笑顔は、すぐに涙に変わった。

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