偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「なっ……。俺はまた、おまえを傷つけてしまったのか……?」
「違います、違いますよ……」

 お兄様を困らせたくないのに。
 やっと言ってくれた言葉を噛み締めていたら、泣かずにはいられなかった。

「嬉しいんです……。初めて、お兄様に言われました……。『愛してやる』だなんて……」
「い、言ったか……?」
「言いましたよ! もう、録音しておけば良かった……!」
「それは、やめてくれ……」

 二人で苦笑しながら、横になってベッドの上で抱きしめ合う。
 しかし、しばらくしてお兄様の手が震え出した。
 これが叔父様の言っていた症状──。お兄様は、まだ私に普通に触れる事ができないのだ。
 その震えを止めようとしているのか、強く手を握りしめている。
 お兄様は自分を責めるように拳を噛む。歯形と滲み出てきた血が、痛々しい。
 その手をそっと取り、傷口に触れないようにキスをする。

「お兄様、無理はしないでください。私は、このままでも充分幸せです。それに……」

 今までの仕返しをするように、たくさん、たくさんキスをした──。
 お兄様の唇も、頬も、身体も。口付けの音が部屋に響く。
 私の方から触れる分には、大丈夫そうだ。
 お互いの寝間着のボタンを外し、肌を見せ合う。

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