偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜



「リア」

 お互いを感じた後、私がお兄様の懐に潜り込んでいると呟くように私の名を呼んだ。

「今まで、すまなかった……」

 謝罪なんて。
 お兄様は常に注意を払っていたのに。
 
「わた、私も……。あの時、お兄様の言葉を、信じられずに……」

 反発ばかりしていた。
 テオがあんな風になってしまうなんて、想像もしていなかったのだ。
 
「リア。俺の正直な気持ちを言う」

 お兄様は、真っ直ぐに私を見つめた。
 物心つく前から一緒にいる家族なのに、こんなに近くで真剣な表情をされると一層ドキドキする。

「俺は、正直まだ怖い。またいつテオがおまえを奪っていくかと思うと、触れる事もできない。抱きしめて守ってやることすら……」

 お兄様の手が再び震えて、それを抑えるようにぐっと握り締めている。

「それでも……。それでも、おまえが望むなら……俺は今度こそ、テオと向き合おうと思う。そうする事で、おまえに触れられる日も来ると信じたい……」

「お兄様……っ。ありがとう……!」

 その気持ちが嬉しくて涙が出る。
 愛おしくてお兄様の背中に手を回し、胸に顔を(うず)めた。
 私はとても欲張りで、きっと罪深い事を言っている。
 罰が下らないように強くなろう。
 そして二度とお兄様の手を離さないと、心に誓った。
< 179 / 252 >

この作品をシェア

pagetop