偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 “なんで”?
 自分の意思でここへ来たのではないのか? と(いぶか)しんだ。

「俺は、良くなっているはずだよ。先生の言う通り、投薬もして……。なのにさ、なんでかな……」

 苦しそうに表情を歪め、

「良くなってると実感するたびに、母さんが出てくるんだよ……」

 初めて母親の話を吐露した。

「ねえ、先生。俺、まともになってるんだよね……?」

 胸の辺りで病衣を握り締め、今にも(くずお)れそうになりながら、
  
「先生の言う、“まとも”になってるんだよねぇっ!?」

 テオはついに悲痛な叫びを上げた。

< 197 / 252 >

この作品をシェア

pagetop