偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 リアは尚もテオの明るさを信じたかった。
 自分が人と違う事に対して卑屈にならなかったのは、両親や義兄の優しさと、テオが笑顔でいてくれたからだと信じて止まなかった。
 しかしテオは、その盲目的なリアの考えを受け入れる事はできなかった。

「それってさぁ……。姉さんの理想の俺でしょ?」
「え……?」
「姉さんは、今まで俺の何を見てきたの? 兄さんの、何を見てきたの?」

 リアは、何も答える事ができなかった。

「……まあ、いいや。これについて突き詰めるつもりはないし」

 テオが急に冷静になった。
 そして、いつものような笑顔に戻っていた。

「いいよ。俺、姉さんのお望み通り、『普通』の、理想通りの義弟(おとうと)になってあげる」
「テオ……?」

 リアは、テオが少しずつ後退(あとずさ)りしている事に気づいていなかった。

「……いけない、リアさん! テオさんに、いきなり『普通』を求めてはいけません……!」
「えっ?」
「リアさん、あなたにも覚えがあるはず。人が我に返った時、まず抱く感情は羞恥心と……罪悪感です!」

 
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