偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「なんで……」

 仰向けになったまま、テオは掠れた声を出した。

「なんでなんだよっっ!! なんで助けるんだよ……なんで兄さんが助けるんだよッッ!!!!」

 駄々をこねるように泣き喚くテオの頬を、アルフレッドは容赦なく殴った。

 本当は今までの恨みも込めてもっと殴ってやりたいところだ。
 だが、アルフレッドには体の痛みよりも胸に刻みつけてやりたい想いがあった。
 
「おまえは……。おまえは、自分だけ逃げて一生リアに罪悪感を植え付けるつもりか!!」

 胸倉を掴み、鼻先がついてしまうかと思う程の距離で、腹の底から叫んだ。
 ここでテオが命を落としてしまえば、リアは自分を責め続けるだろう。
 たとえそれが自分を傷つけた相手だったとしても。
 理解し難い感情だった。
 しかしそれでも、アルフレッドはリアの気持ちを第一に考えていた。

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