偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

29・6年前。テオ視点の真実*


 6年前──テオが12歳の頃の事だった。
 テオとリアは中等部、アルフレッドは大学生で、いつも最初に家に帰ってくるのはテオだった。

「ただいまー!」

 元気よく挨拶して、自分の部屋にカバンを放り込むように投げ、手を洗っておやつを食べながら兄と義姉の帰りを待つ。これがテオの日常だった。
 けれども今日は、母親であるレナーテが笑顔で話しかけてきた。

「テオ、一緒にお出かけしない?」
「いいよ。どこに行くの?」
「母さんのお気に入りの場所。とっても景色が綺麗なの」
「うん、行く!」

 母親と二人きりで出かけるのは久しぶりで、テオは素直に喜んだ。
 兄との確執のこともあって、レナーテは少しよそよそしい態度だったこともある。
 それでもテオは母親の事が大好きだった。

< 204 / 252 >

この作品をシェア

pagetop