偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 その様子を離れた場所で見ていたディルクは、やれやれとため息をつく。

(カールに呼び出されて来てみれば……。とんでもない事実が出てきたもんだ……。当時テオドール君は12歳な上に正当防衛……。法的に罰せられる事はないだろう……。しかし……)

 6年前の事件は自分の管轄ではなかったが、当時の担当者に話を聞いてみる必要があると考えた。
 もう自分がいなくても大丈夫だろう。車の方へ足を向けると、カルステンに呼び止められた。

「ディルク、どこへ行く?」
「あの事件を、もう一度洗い直す。テオドール君に話を聞くのは、それからだな」
「そうか、わざわざ悪かったな……」
「今までの借りは、きっちり返してもらうからな」
「ははは、善処するよ」

「ねえ、待ってよ」

 そんな二人の間の妙な空気を斬るように、落ち着きを取り戻したテオが静止した。

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