偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「待って、姉さん」

 来客用の駐車場へ行こうとすると、テオが腕を掴んできた。

「実は、早く来たのは話があるからなんだ」
「話って?」
「ここじゃ、ちょっと……」

 テオは、人の目を気にしていた。
 結局、ひと気の少ない駐車場の隅の方へ移動した。

「テオ、どうしたの?」

 テオは、少し言いにくそうに表情を曇らせた。

「姉さん……。兄さんと、キス、してるの……?」

「えっ!? ど、どど、どうして!?」
「……してるんだ?」
「ち、ちが……っ、どうしてそんなこと訊くの? って言いたかったの!」

「間違えたのは……。間違えたのは、場所じゃなくて……兄さん、だよね……?」

 テオは、自分の唇に手を当てて言った。
 この間の──キスのことを。

「姉さんは、ウソをつくのが下手だなぁ」

 テオは、寂しそうに笑顔を作った。

「ち、違うよ、テオ! テオが思ってるようなことじゃないの! 私は……お兄様に恨まれているの。
 だから、私の嫌がることをしてくるの……」

「恨まれてる? 兄さんが、そう言ったの?」
「そうよ……。恨んで、憎んで、一生逃さないって」

 私は、静かに涙を流した。
 テオは、私の涙を拭いて手を取った。

「姉さん。俺と、一緒に逃げよう!」
「えっ!?」
「姉さんの嫌がることをしてくるんでしょ? いつから?」
「たぶん……お父様が亡くなってからだと思う」
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