偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

30・19年前。レナーテ*

 19年前──

「やあ、いらっしゃい。ダニエル、レナーテ」
「おお、久しぶりだな、カール!」
「久しぶりね」

 戦争が終わって約一年、ダニエルは家族でカルステンの家を訪問していた。
 二人は戦場ぶりである。
 レナーテとカルステンは昔、同じ大学の研究室にいたが、会うのは結婚式以来だった。

「こんにちは」

 5歳になったアルフレッドが、ぺこりと挨拶する。

「アルフレッド君、大きくなったなぁ。……で、こっちが……」
「ああ、あの時の赤ん坊だ」
「リアと名付けたわ」

 カルステンと向かい合うように、リアを抱き上げた。
 まだ1歳のリアは、人見知りせずにカルステンに手を伸ばす。
 レナーテは、戦場で放置されていたリアの保護をダニエルに頼んだのは、カルステンだと聞いていた。
 ダニエルが赤ん坊を抱いて帰って来た時には驚いたものである。

「リアちゃんか。将来が楽しみだな。おーい、ポポロム!」

< 213 / 252 >

この作品をシェア

pagetop