偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
32・前を向いて
カルステンが現役を退いたのは、それからしばらくしての事だった。
二人の告白を合わせたことにより真実が浮き彫りになった。
誰もが言葉を失い、カルステンの次の言葉を待っていた。
「俺は後悔した。レナーテを死なせてしまった事、テオの脅迫に抗えなかった事。そして、正しい診断が出来ずに、おまえという怪物を生み出してしまった事をな……」
カルステンはテオを睨みつける。
テオもまた、笑顔の仮面を崩しカルステンをまっすぐに見ていた。
「だからお前、あんなに逮捕に拘ってたのか……」
ディルクは、数ヶ月前にカルステンが端末を借りるために頭を下げた事を思い出していた。
「そうだ。逮捕して措置入院させる事が、俺の目的だった」