偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「ポポロム」

 カルステンは、ポポロムに向き直った。

「え……僕ですか?」

 自分が呼ばれるとは思っていなかったのか、ポポロムは少し驚いて返事をした。
 
「悪かったな、おまえにテオを押し付けてしまって」

 ゴンドル族として生きる事を望んでいたポポロムに、医者の道を進めたのはカルステンだ。
 それが結果的にとはいえ自分の尻拭いをさせているようで、常に思い悩んでいた。
 そう言うと、ポポロムは少し考えているようだった。

「……いえ。押し付けられたとは思ってません。何がどうあろうと、テオさんは僕の患者です」

 怒りをぶつけられるかと思っていたが、ポポロムの表情は意外にも穏やかだった。
 目頭が熱くなり、涙が出てくるのを堪える。

「そうか……。よろしく、頼むよ……」

 
< 229 / 252 >

この作品をシェア

pagetop