偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 テオの大学は家から車で2時間以上もかかる距離。私の通う大学からも同じくらいだった。
 そこを少し過ぎて、雑木林の中を進むと、いかにも何か出そうな雰囲気の館があった。

「こんなところに廃屋が……?」
「今は誰も住んでないみたいだよ。大学の友だちと、時々来てるんだ」

 テオは秘密基地と言っていたけれど、おそらく誰かの所有する空き家だろう。長く滞在はできないかもしれない。
 中に入ると、埃っぽい空気が舞った。大学の友だちと時々来ているにしては、手入れも全然されいない。

「……ねえ、勢いで来てしまったから、着替えも今晩の食料もないわ。手持ちのお金で足りるかしら……?」

 私は、ハンカチで口を押さえて、咳き込みそうになるのを堪えながら言った。

「ねぇ、姉さん」
「きゃっ!?」

 テオが、後ろから抱きついてきた。

「姉さんは、俺を選んでくれたってことだよね?」
「え? そう、ね……。テオと一緒に暮らすって決めたから……。でも、まずはここをもっとお掃除しないとね」
「姉さん……。俺は、兄さんと姉さんが大好き……」
「テオ……」

 やっぱり心苦しいのかな……。
 黙って来ちゃったんだもん……。
 私はテオに向き直り、正面からテオを慰めるように抱きしめた。

「兄さんが、好きで好きで好きで好きでたまらなくて」
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