偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
 そう言って、ポポロムは去って行った。
 お礼を言うのはこちらの方なのに、とリアはその後ろ姿に向かって深く頭を下げる。
 自分は何もできなかった。それどころかテオを追い詰めてしまうところだった。
 アルフレッドがいなかったらどうなっていた事か……。スカートの裾をぎゅっと握りしめたまま、頭を上げることができなかった。

「……リア」

 アルフレッドはリアに触れようとしたが、やはり手が震え出す。
 それに気づいたリアが、姿勢を戻してそっと手を差し出した。

「俺はおまえを……守れたか?」
「はい。私も、テオも守ってくれました。ありがとう、お兄様……」

 リアは涙を流しながらアルフレッドに抱きついた。

 自分がもっと、テオと向き合えばこのような事にならなかったのだろうか……?
 テオに関わった誰もがそう思っているだろう。
 過去を責めるのはよそう、とアルフレッドは頭を振った。
 自分はテオを救った、リアを守った、それでいい。
 そう思うと、自然とリアを抱きしめ返していた。

「お兄様……!」

 背中に触れたアルフレッドの手に驚き、リアは顔を上げる。
 今なら自分から触れられる。
 そう確信すると、潤んだリアの瞼にそっと口付け、そのままお互いの唇を重ねた。

「今は、先生を信じてテオの帰りを待とう」
「はい……はいっ……!」


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