偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
***

 
 2年後、リアは卒業間近で休学していた分の単位をようやく取り戻した。
 卒業はできるが、就職活動ができないでいた。種族の問題だ。
 応募規約に明記はされていなかったが、やはり社会に飛び込んでいくのは躊躇われた。
 それに、この時期ではすでに募集は締め切られているだろう。
 寂しい気持ちはあったが、家事手伝いをしっかりとやろう、そしてジェシーやモニカとたまに会えれば……と思っていた。

 ある日、兄であるアルフレッドが息を切らせて帰ってきた。

「リア!」
「ど、どうしたんですか、お兄様? そんなに慌てて」
「ニュースを見てないのか? 父さんが訴えていたゴンドル族への差別緩和を、ついに政府が認めた!」

 アルフレッドは、その記事が書かれているスマホの画面を見せた。
 難しそうな政治内容の記事の端の方に、公国総帥とカルステンの写真が載っている。
 これにより、ゴンドル族は結婚や就職もしやすくなった。
 さらにカルステンの一押しにより、期間限定でゴンドル族を採用すると国から企業へ支援金が出るようになっていた。今なら支援金目当てで優遇されやすいということだ。

「リア、就職活動をするなら今だ。やりたい事はないのか?」
「私、私……」

 アルフレッドの言葉に、リアは諦めかけていた夢を思い出す。

「実は、やりたい事があるんです……!」
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