偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
***


 
「行ってきます、お兄様」

 私は大学卒業後、憧れだったブライダルプランナーの仕事に就いた。
 差別緩和がなければ、絶対になれなかった職業。叔父様が尽力してくれた補助金の効果もあって、私は難なく就職活動を終えた。亡くなったお父様には感謝しかない。今でも毎朝遺影に手を合わせて感謝の気持ちを伝えている。

「待ちなさい、リア。髪が……」

 今までは少し無造作なボブカットだったが、就職して真っ直ぐに整えるようになった私の髪。
 お兄様が、それを整えようとする。

「もう、お兄様。耳は出していても大丈夫です」
「そうは言ってもだな……」

 お兄様の言うとおり、差別緩和が進んだと言っても心無い言葉を投げてくる人はいる。
 それでも、私は堂々と歩きたいのだ。
 言葉を遮るように、私はすかさず『行ってきますのキス』をする。

「リ、リア……!」
「行ってきます」

 恋人同士になったのだから、唇にするのは問題ない。
 しかし、あの出来事でお兄様から『行ってきますのキス』をする事はなくなった。
 だから先程のように私がしたい時にさせてもらっている。

 
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