偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜
「あの、私は構わないのですが……おに……。“彼”にも訊いてみないと……」

 危うく、『お兄様』と言いかけてしまう。
 説明が面倒なので、あまり家族だと知られたくない。

「そうね。今週中に返事をもらえると助かるわ」

 チーフはスケジュール帳を開きながら言った。

「ところでリアさん。お相手の写真は……あるかしら?」
「え、ええ。スマホにありますが……?」
「いえ、一応宣伝モデルをやっていただくわけだから、その……ねぇ?」

 チーフは言葉を濁して言った。
 なるほど、お願いする前にモデルの外見を確認したいのだろう。
 それならば、私は自信を持って紹介できる。

「ああ、そういう事でしたら……どうぞ」

 私の自慢のお兄様で恋人。
 以前、二人で湖の傍をデートした時の自撮り写真がスマホに入っている。
 それを見せると、チーフは驚いた顔をした。

「ちょ、ちょ、ちょっとリアさん! あなた、こんなイケメンとどうやって知り合ったの!?」
「どうやってと言われましても……」

 本当に。義兄(あに)ですとは言いづらい……。

「ああっ、この業界って出会いがないって言われてるのに……! あなた、なんて幸運の持ち主なのーー!?」

 昼休みの残りの時間。
 私はチーフにガクガクと肩を揺さぶられ続けた。


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