偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

5・過去 sideアルフレッド

 午後7時──。

 今日も家族三人で過ごしたいというリアの希望を聞くために、仕事を早く切り上げて定時で帰ってきた。しかし、俺が家に辿り着いた時に灯りはついておらず……リアは、帰ってきていなかった。

 スマホのメッセージを見逃したかと思い確認したが、連絡の一つもなかった。
 こんな事は、今までに一度もなかった。ましてや、リアはゴンドル族。長時間外にいること自体が危険なのだ。
 それどころか、テオが約束の時間になっても現れない。

「……まさか」

 スマホのGPSアプリを起動した。
 GPSは、父が昔からリアに持たせていた。しかし、リアが思春期に入ってしばらくした頃、それを嫌がったことがあった。
 父が亡くなって、リアを見守る事が困難になり、再びGPSを持つように言った。だが、その時リアはすでに俺に不信感を抱いていたため拒否された。無理もない。

 だから俺は、リアの靴を細工して、GPSを忍ばせた。
 外で、いつ何が起きてもいいように──。

 スマホ画面に、見慣れない場所が表示される。
 この場所は……テオの大学の近くか……?

「リア……なんてことをしてくれたんだ……!」

 悲観している暇はない。
 俺が今から車を飛ばしても約2時間はかかる距離。
 その間に、リアは──。

 背筋が凍る思いだった。

 あのテオと一緒にいて(・・・・・・・・・・)無事なはずはないのだ(・・・・・・・・・・)



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